臆病な自尊心

20歳の今、僕は本気を出せば何にでもなれる気がする。英語は微塵もしゃべれないけれど、将来は海外で働ける気がするし、バイトすらしたことないが億万長者になれる気がする。きっとこの感覚は年を重ねたり、社会に出たら打ち砕かれるか、自然に消えていくんだと思う。この感覚は多くの大学生や、この年齢の人なら持ち合わせているのかもしれない。それが健全な形であるならば、彼らの人生の起爆剤になるかもしれない。しかし、僕の場合はおそらくこの感覚を失いたくないがためにだらだら生きているような気がする。

こんなことを考えていると、現代文で読んだ山月記のことをふと思い出した。作中に搭乗した「臆病な自尊心」のことだ。高すぎるプライドを守るために失敗を過度に恐れてしまい何もできなくなる。高校生であった当時の僕には突き刺さりまくり、授業中に顔が熱くなったのを覚えている。どうやらこの時から僕は何も成長していないらしい。たった2、3年で人生が変わるかと言われたら変わらないことの方が多いだろう。今のところ僕を呼ぶ声は聞こえないが、一度水面で己の姿を見てみたほうがいいかもしれない。